障害年金における社会的治癒とは
1 社会的治癒の意義
障害年金の申請では、初診日(障害の原因となった病気やケガで初めて医療機関の診察を受けた日)がいつかを特定することが非常に重要です。
初診日は、障害の直接的な原因となった症状で初めて受診した日に限らず、その前に相当因果関係がある症状で受診していれば、その日が初診日となります。
一方で、一旦医学的に病気が完治し、その後に再発した場合には、再発する前と後の病気は別傷病となり、再発した後に受診した時点が初診日となります。
社会的治癒は、医学的には完治してないけれども、一定期間治療を行う必要がなく通常の生活を営んでいる場合には、その前後を別傷病とみなして、その期間の後に受診した時点を初診日とする運用上の取り扱いです。
2 社会的治癒を主張することの効果
例えば、初診日が数十年も前であり、初診の病院にカルテが残っておらず初診日の証明ができない場合で、その後一定期間治療を行う必要がなく通常の生活を営んでいれば、社会的治癒を主張することで、初診日がその一定期間の後になり、初診日を証明できる可能性が出てきます。
また、初診日には国民年金に加入していたが、治療を行う必要がなく通常の生活を営んでいた期間があり、その後に受診した時点で厚生年金に加入していた場合には、社会的治癒を主張することによって、厚生年金に加入していた時点が初診日となり、より軽い障害の程度でも障害年金が支給され、同じ等級であれば年金額も増えるというメリットがあります。
なお、社会的治癒は、申請する側の受給権に対する期待を保護するための運用であり、保険者(日本年金機構)側から社会的治癒を持ち出すことはできないと考えられています。
3 社会的治癒が認められる場合
おおむね5年以上通院も服薬もしておらず、通常の生活を営んでいた場合には、社会的治癒が認められる可能性があります。
また、通院をしていても、治療目的ではなく経過観察や予防的治療だけであれば、通院していないものとみなされます。
ただし、社会的治癒は一定の条件がそろえば必ず認められるものではなく、審査する側の裁量によるところが大きいため、認められるかどうかを正確に予測するのは困難です。
一般的には、うつ病等の精神疾患は症状の重さが変化しやすいため社会的治癒が認められやすい傾向にありますが、症状が徐々に悪化していく進行性の病気等では認められにくい傾向にあります。
4 専門家に相談を
社会的治癒は、通常の申請方法では障害年金の受給権を得られない場合等に用いる手法であり、年金事務所での相談ではアドバイスしてもらえない場合もあるようです。
もしかしたら社会的治癒に該当するかもしれないとお考えであれば、障害年金を得意とする専門家に相談することをおすすめいたします。